愛してしまったので離婚してください
「行こうか」
翌日、朝から私は予定していた手術の支度を終えて、病室で待っているとそこに雅が来てくれた。
すでに手術用の服に着替えている雅。

きっと集中する時間を設定するために、ほかの患者さんではしないのだろう。
看護師たちも雅の動きに合わせてあれこれと話をして、段取りを確認しているのがわかる。

「もうすぐ会えるな。」
車いすに乗せられている私の前にしゃがむ雅。
「うん」
お腹に触れながら、雅は最後の願掛けをしているようで何やら、お腹をじっと見つめながら話しかけている。
「大丈夫。元気に産まれて来いよ。生まれてくれたら、パパが守るからな。」
雅は頷いてから、立ち上がり私の目の前にしゃがんで顔を近づけた。

「すぐ会える。目を覚ましたら俺たちの息子は無事に産まれて、晶の中の悪い部分も消えてなくなってる。今とは全然違った世界が待ってる。」
私は涙をこらえる。
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