愛してしまったので離婚してください
「怖かった。メスを握る手が初めて震えた。でも、絶対に守りたいって強く思った。何が何でも守りたいって。」
手術で疲れ切っている雅は私のベッドに横になり、私の傷や点滴、バイタルチェック用のコードに気をつけながら抱き寄せてくれた。

まだ口には酸素のマスクをされている私。
体の麻酔もまだ覚めておらず、傷口の痛みもほとんど感じない。

「信じてくれてありがとう。俺を、信じてすべてを預けてくれてありがとう。」
「・・・私の言葉・・・でしょ・・・それ・・・」
途切れてしまう言葉を雅は穏やかな顔をして聞いてくれている。

「ありがとう。雅。」
愛する夫に私は微笑みかける。

どうしても今日は涙腺が緩んでしまって、涙をとめることができない。
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