愛してしまったので離婚してください
頷いた私に雅は困ったように切なく微笑みながらこう言った。

「ありがとう」と。


このありがとうは、さようならのかわりかもしれない。

このありがとうは、これまでの5年間が終わる合図かもしれない。



雅が予約してくれた高層階の完全予約制のレストラン。
はじめての二人きりの外食。
今日は5年目の結婚記念日。

黒のタイトなスーツ姿の雅と、ホワイトベージュのワンピースを着た私。
結婚式以来初めてこんなに着飾って出かけた。

机の上にはコースの最終料理であるデザートと、小さな箱から見えるのはダイヤがきれいにちりばめられた指輪。
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