桜色の歌と君。
―春。
まだ体に馴染まない制服を身にまといながら歩く校舎は、少し緊張する。
入学して早三日。クラスメイトと交わす会話もぎこちなくて、高校生活の期待よりも不安が上回っている私は、放課後に校内を一人で探索していた。
五階を一通り歩いて回ったとき、屋上に続く小さな階段を見つけた。
開いてないだろうな。
そう思いながらも、少し胸を高鳴らせて階段を上がって行く。
銀色の扉は鍵がかかっていなくて、少し力を入れただけで簡単に開いた。
柔らかく温かな風と一緒に、春の匂いが流れ込んでくる。