桜色の歌と君。
「僕は宮野遥人。隣の席の人なんだけど、気づいてた?」

「えっ」思わず声を上げた私を見て、宮野くんはくすりと笑う。

「やっぱり気づいてなかったか。まあいいや。今日覚えたでしょ?」

「覚えた。」

「良かった。」

宮野くんは空に向かって大きく伸びをした。気持ちよさそうに春の空気を思いっ切り吸い込む姿は、見ていてとても清々しい。

「春の香りが、ずっと続くといいね。」

宮野くんは目を閉じて、空を仰ぎながら言った。

宮野くんの口調や言葉は他の同級生と雰囲気が違っていて、何だか不思議な気持ちになる。

でも、彼が口にした願いは、私も心に思ったことがあるものだったからうれしく感じた。

「そうだね。」そう返して、私も同じように目を閉じて、意識を空に向けた。
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