桜色の歌と君。
ホームルームを終えて先生が教室を後にすると、クラスが生徒の話し声で包まれる。

まだ目立ったグループは出来ていなくて、ほとんどが席に座ったまま近くの席の人と話している状態だ。

後数日経てば、同じ部活に入りたい子達、同じ趣味を持つ子達などでそれぞれ固まり始めるだろう。私はどこかの輪の中に入れるだろうか。

私には、やりたい部活も趣味も特にない。本を読むことは好きだけれど、いきなり好きな本の話をしたら真面目過ぎると思われて敬遠されそうだし。

ギターを弾くことは趣味と言えるかもしれないけれど、だからと言って最近の子達が好むような流行りの曲はほとんど知らないし。

これといって誰かと喜びや悲しみを共有して共感してもらえるような話もないし、空気に溶け込むように、ただ静かにしておくのが一番妥当だろう。

中学の頃から一人で行動することには慣れている。周りが机をくっつけてお弁当を広げる昼食の時間だけはさすがに居心地が悪いから、一人で食べられる場所を探せばいい。昨日は空き教室を見つけてこっそり昼食を取った。

そうだ、今日は屋上に行ってみよう。さすがに入学早々お弁当を持って屋上へ行く強者はこのクラスにいないだろう。

上級生はいるかもしれないが、あの広さなら私一人増えたところで何も変わらないはずだ。

昨日見つけたお気に入りの場所にまた行けるとなって、私は少し胸を高鳴らせてその時間を待った。
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