ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 ――私のこと、好きって言ったくせに。

 律は深川さんの前から立ち去った。

 ――私と一緒にいるよりもアメリカ留学を選んだのかな。……ううん、あの告白は、ただ自分の気持ちを伝えるだけで良かったのかもしれない。きっと私とどうなりたいとか考えてないんだ……。

 律はそういう思いで頭をぐるぐるさせながら廊下を歩いていると、誰かと肩がぶつかった。
 顔を上げる。はるな先生だ。

「あらーっ。前髪切って眼鏡はずして、イメチェンしてるじゃない、その方がずっといいわよ」
「先生……」

 はるな先生は、熱愛報道を誤解していたことを謝ってくれた。
 そして、芸能ゴシップ好きのキラキラ……いや、ギラギラした視線を律に向ける。

「これ見た?」

 そう言って渡されたのは、週刊誌。以前律と新條の熱愛報道が載ったのも、この週刊誌だった。
 開くとそこには、『独占取材! 新條アサヒ 事務所退所しアメリカへ行く理由』の大きな文字と新條の写真が。

 律は、朝のドタバタで忘れかけていたことを思い出した。 

 ――昨日の夜テレビで新條が言っていた、SDカードと引き換えにしたとっておきのネタって、まさか……。

「新聞やネットニュースでも、新條が事務所を退所してアメリカへ行くことは載ってたわ。事務所はその経緯について説明するコメントも出していたし。けどね、新條のコメントは、この週刊誌以外どこにも載っていないの」
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