ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「独占取材だからですね?」
「ええ、そういうこと」

 新條の考えを知りたいのなら、この週刊誌を買うしか術はない。
 この学校だけでも、これだけ多くの生徒たちがこの週刊誌を手に入れている。日本中で、相当売れているはずだ。
 新條が出した条件は、週刊誌のカメラマンからしたらおいしい話だっただろう。

 ――俺が辞めますから、なんて口から出まかせを言ってるんだと思ってた。まさか本気だったなんて……。

 新條が所属していた事務所は、芸能界で一、二を争う大手だ。余程の覚悟がないと辞められないだろう。それに事務所は、相当な理由がないと人気絶頂の新條を手放さないはずだ。
 律が理由を詳しく知りたくなって週刊誌に目を通していると、

「新條が乗るのは午前十時の飛行機よ」

 はるな先生は、自分の腕に着けているブランドものの腕時計の文字盤を指さした。
 時間が迫っている。

「行かなくちゃ」

 もう会えないなんて、そんなの嫌だ。
 胸が張り裂けそうに痛む。
 どうしてこんな気持ちになるのだろう?

 ――ああそうか、『好き』ってこういうことなんだ。
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