ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「私は元アイドルです。今はもう隠居の身ですので」
「それはそれとして。四限目のあんたの態度には失望させられたわ」
体育祭の係決めをした四限目。立候補者がおらず、ダンス係だけ決まらなかった。
「ダンスといったらあんたでしょ、あたしはあんたが引き受けてくれると期待してたのに。そっぽ向いちゃって冷たいじゃないの」
律は、幼い頃から歌ったり踊ったりするのが好きだ。よくテレビに映るアイドルの真似をしていた。そしてそんな自分を見て家族や親戚が笑顔になってくれることに何より幸せを感じた。自分の歌やダンスで人々を笑顔にできるって、なんて素敵なことだろうと。アイドルになりたいと思ったのもそれが理由だった。
だけど律はもう、アイドルだった時の記憶を消してしまいたいのだ。
「嫌です。私はこの学校で誰とも関わらず、地味に地味に過ごすと決めているので」
「ふーん、そう……。そういえばあんた、進路希望調査、白紙で提出してたわよね。いい度胸じゃない。放課後、よっぽど居残りしたいのね」
はるな先生は笑顔を浮かべてはいたが、その裏では、血管が切れる程の激しい怒りがこみ上げているようにも見えた……。