ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 律は、理想の自分になれなかったら人生終わりだと思っていた。
 でも新條は、本来の律にもいいところがたくさんあると言ってくれた。

 『理想の自分って、自分が思っているほど良いものじゃないのかもしれない。理想の自分になれなくて良いんだ、本来の自分にも良いところはあるんだ』

 新條のおかげで、そういう考えにたどり着けた。
 新條のおかげで、しがらみから解放されて、この上ない程晴れやかな気分になれた。

 新條にならありのままの自分をさらけ出せる。
 こんなダメダメな自分を優しく受け止めてくれる人なんて、日本中どこ探しても新條だけだと思う。皆、アイドルの律しか見ていないのだ。

 ――でも、新條は好きになっちゃいけない人。みんなの、アイドルだから。
 世間の恐ろしさは熱愛報道で身をもって知った。
 この気持ちには蓋をしなきゃ。律はそう思った。

「空港まで車で送ったげる。きっとどの公共交通機関よりも速いわよ」

 はるな先生の口から思いがけない言葉が飛び出す。

「やっぱり、行くのやめときます」
「どうして?」

「空港に行ったら、世間を無視して自分勝手なこと言ってしまいそうで……」
「あんたは周りを気にしすぎ。もう少し我がままになってもいいんじゃないかしら。もう、あんたもアイツもアイドルじゃないんだから、今がチャンスでしょ」
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