ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 なぁんだ、プライベートではこんな感じなのね。と、律は新條をほんの少しだけ見直し、問いかけた。

「どんな振り考えたの。見せて」

 二人で、机がない部屋の後方に移動した。

 新條は張り切って、考えてきたダンスを踊り始める。

 髪を揺らして、腰を捻って。
 ズルいな、と律は思った。
 どんな動きも絵になるのだ。
 ダンスコンテストなら、優勝かもしれない。

 しばらく見入ってしまったが、足の動きが複雑で難易度高めのサイドウォークが登場して、ようやく気づいた。

 ――こんなの新條にしか踊れないよ! ダンス初心者には無理だって!

「ストップストップ!」

 律は慌てて中断させた。

「何かおかしかったですか?」

 新條は首を傾げ、何故止められたのか分かっていなさそうな顔をしている。

「難しすぎるよ」

「え?……あ、そっか」

 やっと、初心者には難しいということに気付いたらしい。

 ――元々ダンスが出来た奴だから、ビギナーの気持ちが分かりづらいのかな。いや、もしかして、ただのアホ……?

「もっとスピードが遅めの振りが良いよ。例えばこんな感じで……」

 律は基本的なステップをしながら単純に手を動かしてみる。
 引退してから一度も踊っていないから、久しぶりのダンスだ。
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