ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 皆の前に出ると、律は一気に注目を浴びた。

 ――ぎゃああっ。目立ってる、めちゃくちゃ目立ってる。振り付けした責任があるから踊らなきゃと思ってたけど、こんなに見られてたら無理だよ。

「あの人、昨日『嫌だー』って叫んで帰ったよね。そんなに嫌なら今日も帰ればいいのに」
「昨日アサヒくんが怒ったのって絶対月影さんのせいだよね」
「アサヒくんとペアなんて釣り合ってなさすぎ」

 冷たい言葉が飛んでくる。

「悪いけど、新條一人で踊ってくれる? 私後ろの方で見てるから……」

 小声でそう言う律に、

「今更何言ってるんですか。いきますよっ」

 新條が元気良く声をかけてきた。大丈夫、目でそう伝えてくれている気がする。

「うん」

 律は気を取り直して返事をした。

 ワン、ツー、スリフォーとカウントを取りながら、ついさっき律が即興で考えた振りを披露する。

 左右の足をクロスして軽やかにステップを踏む。

 左腕を横に伸ばし肘下だけくるりと外側に回しながら、左に一歩進み右足を左足の後ろに添わせた。次に左右逆になっただけの動作をする。

 華麗にターンし一回手を叩く。

 キックするイメージで左足を上げ、左足から右足の順でトントンと床を踏む。

 見ている人を意識して、楽しそうな表情で。
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