ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 新條は一回見ただけで覚えており、律とバッチリ合わせてきている。

 そして二人は左手を前に突き出し指差すポーズで締めくくった。

 すると、周囲がシーンと静まり返る。リアクションが無い。

 律が不安になっていると、昨日のダンス会議で進行をしていた女子の片割れである深川さんが、椅子から立ち上がった。

「こんな素晴らしい振り付けも、完璧なコンビネーションも、今まで見たことない!!」

 その賞賛によって、皆が新條の方を向く。

「カッコよさと可愛さと覚えやすさの三つが成立する振り付けを考えつくなんて、アサヒくんさすがだね!」
「月影さんがあんなに踊れてるってことは、アサヒくんよっぽど指導が上手いんだ!」

 ――ああ、そうだよね、誰も私が考えたなんて思わないよね……。

 自分のアイデアが全て新條の手柄になってしまったみたいで悔しさを感じた。拳を固く握りしめる。

 でもこれで良かったんだ、目立たなくて済んだんだもん。そう思いかけた時だった。

「俺じゃねぇよ。この振り考えたの、月影先輩だから!」

 新條の発言で、俯いていた律は顔を上げた。皆の輝く視線が律に注がれている。
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