ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「えーっ、アサヒくんじゃないの?」「見た目とキャラが違うじゃん!」
「月影先輩って何者ですか?」「ダンスの経験あるの?」
同時に大勢に話しかけられ、狼狽える。「独学でね……」と小声で言うのが精一杯だった。
もう一度見たいとリクエストがあり、さっきと同じように踊る。すると皆が律と新條の真似をし始める。
嬉しくなって、律の顔に笑みが浮かんだ。
新條は、律が褒められるのを自分の事のように喜んでいる。「ほらほらーっ。先輩、もっと自信持って下さいよ」
「あの誰に対してもため口の新條が敬語を使っている、だと……?」
まるで衝撃映像でも見たかのように、皆ざわつき始める。そんなオーバーな。
「ヤンチャな新條だって、敬語ぐらいは使えるよ。ねぇ?」
「一言多いですけど……。先輩には、敬語を使うと決めています」
律の発言に新條は少しムッとしたようだが、答え方は丁寧だった。
「……その先輩ってのは、上級生にはってことでしょ?」
こんなこと聞くまでもないと思ったが、射抜くように見つめられると自分限定のような気がして、律はつい尋ねてしまった。
新條は真顔になった。
「いえ、先輩にはってことですけど、当然」
一同騒然。
「人の言う事なんかちっとも聞かない新條を、あんなに手懐けてる月影さんって、何者……?」