ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 ――私、新條と何か約束したっけ?

 律は足がもつれそうになりながらも、新條が行く方へ一緒に走るしかなかった。
 廊下ですれ違ったはるな先生が、「ひゅ~青春してるね~」と冷やかすように言ってきたが言い返す間もなかった。

 二人で廊下を駆け抜け、階段を下り、とうとう中庭までやってきた。

「どうしてこんな真似するのよ! トップアイドルは何しても許されると思ってるなら大間違いよ! 調子にのってんじゃないよッ!」

 ようやく緩んだ新條の手を、律は全力で振り払う。記憶を遡ってみたが、やっぱりこんな約束した覚えはない。

「だって決まったじゃないですか、一曲全部俺と先輩で振り付けするって」

 昨日のダンス会議でのこと。深川さんが「ダンス衣装の制作は任せて。デザインも採寸も生地の買い出しも縫製も全部私たちでするし、振り付けに集中できる環境づくりに協力するから」と立て板に水のごとく喋り、律も新條もあれよあれよという間に言いくるめられてしまったのだ。

 衣装制作の段階に入りさえすれば新條とも距離を置けると思っていた律にとって、最悪の出来事だった。これからしばらく新條と二人きりで振り付けをしなければならないなんて、地獄だ。
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