ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「あ、別に聞き流してくれていいよ、アイドルの恋愛事情なんて口が裂けても言えないだろうし」
「違いますよ、妹に聞いたんですよ。先輩、言っときますけどね、俺は『アイドルだから誰とも付き合えません』。ある人と出会ってから、そう誓ってます」

 へぇ、真面目なところもあるんだ……と自分の中での新條の好感度が上がりそうになって、焦る。それくらいアイドルなら当たり前のことだと、考えていたはずなのに。

 ――これは例えるなら不良が捨て猫を拾うようなものよ。悪そうな奴に実は優しい一面があると、人は惹かれやすいんだ。元々真面目な人の方が偉いのに、不良がちょっと真面目になっただけでチヤホヤされる。そんなのおかしい。

 律は「そう」と素っ気なく答え、話題を変えた。

「妹いるんだ。私ひとりっ子だから羨ましいな」
「そんな良いもんじゃないですよ、妹なんて。俺と違ってすぐ生意気なこと言ってくるんで」
「そっくりじゃない」

 笑うと、新條が「どこがですかぁ」と眉間にシワを寄せる。

 大盛のコンビニ弁当二つをペロリと平らげた新條に、「よかったら私のお弁当食べる?」と勧めてみる。「一口ください」こんなによく食べるのに太らないなんて、少し腹立たしいな。

「うんまっ! 玉子焼き専門店開けますよ。二時間くらい余裕で並べます」
「ありがとう。お母さん喜ぶよ。伝えとくね」
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