ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「……これ先輩の母ちゃんが?」

 そうだよと答えると、新條は「先輩作じゃねーのか……」と何故かがっかりしているように見えた。

「先輩は、何人家族ですか」
「父、母、私の三人だけど」

「ご両親はどんな人?」
「そうね、一言でまとめると真面目、かな。公務員だし」
「じゃー俺んちとは正反対ですね。意外でしょうけど、俺の父親、学生時代ツッパリだったんですよ」

 ツッパリと不良とヤンキーの違いは律には分からない。だけど、そういう類の人ということだよね……と思った。
 確か新條が今撮影中のドラマで演じているのは、ヤンキーの役だ。似合っていると評判だったはず。

「親子そっくりじゃない」
「だから、どこがですかっ。テキトーなこと言わないでくださいよ」
「いいね、明るく楽しい家庭って感じで――」

 まだまだ続けられそうな会話を律は急に止めた。

 ――何でこんなに新條とペラペラ喋ってるんだろう。さっさとダンスの振り付けを終わらせて、新條から解放されなきゃいけないのに。

「AメロからBメロに変わる時のフォーメーションの構成、どんな感じにするか悩んでるのよね」

 律はベンチから立ち上がり屈伸をする。

「あ、それならこんなんどうですか?」

 新條はそう言って立ち――軽々と側転した。
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