ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「じゃあ曲に合わせましょーよ、せっかくだし」

 合わせるっていったって音源ないけど、と律が言おうとしたら、近くに置いてある小型のスピーカーから「ダイヤモンド・ガール」のイントロが流れだした。新條が準備していたのだ。用意周到である。 

 たちまち律はダンスに没入し、リズミカルな動きをみせる。AメロやBメロは、ステップはシンプルである代わりに、手の細やかな動きで可愛さを表現する。

 サビでは、アップテンポなメロディに合わせてダイナミックにジャンプ!    

 創作ダンスは体育祭の目玉だ。生徒の家族、近隣住民、先生達、来賓の方々など見に来る誰もが注目する。そのことをダンス係の子達から教えてもらった時律は、大役を引き受けてしまったと唖然とした。だがしばらくし、武者震いがしてきた。

 ――ここは、腕の見せ所じゃん。

 どうせやるなら、誰もが魅入るようなダンスにしたい。
 だからといって格好良さ重視のキレキレダンスにするのはダメだ。ダンスが嫌いな人にも、体を動かすのが得意ではない人にも、踊っていると楽しいと思ってもらえるダンスでなくては。律はそう考える。

 求められるのはキレキレすぎないけれど見栄えが良い、絶妙な匙加減のダンス。

「――はい、とりあえずここまで」 
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