ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 気に入らなーい。とでも言いたげに表情を歪め、今井さんは律から遠ざかる。

「月影さんもさぁ、アイドル雑誌に載ってるかわいい子見て、ちょっとは見習えばいいのに。でも無理かー。あはは」
「アイドルと月影さんじゃ雲泥の差だよね。ははは」

 ――小声だけど、わざと私に聞こえるように言ってるな、今井さんたち。

 以前の元気いっぱいかつ明るい律だったら、威勢よく言い返しただろう。いや、そもそも以前のままなら、転校してきて約一か月も経つのに名前すら覚えてもらえていない状況にはならなかったはずなのだ。

 だが魂の抜け殻のように元気がなくなった今の律は、心の中でこう思うことしかできない。
 今井さん達の言う通りかもしれない……、と。

 可愛いと思う人間はいないと断言出来る程に、今の律は酷い容姿だ。
 セルフで切ったので毛先がガタガタの髪。
 目の下にしぶとく居座る青いクマ。
 食欲不振により痩せ細った体。

 それでも律は、どんなにバカにされようとこの容貌を変えないつもりでいた。
 何故なら――元アイドルであることを隠したいから。
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