ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「あの、その……昨日は、パンありがとうね。いくらだった?」

 パンの代金を返さないといけない。新條に払ってもらったことが、律にとっては落ち着かなかった。

「あれは俺のおごりです」

 新條はさらっとそう言って、教室に向かおうとする。

「ちょっと待ってっ。そういうわけにはいかないよ」

 払います、という意思表示のために自分の財布を見せた。

「払わなくていいですよ。あれは俺が勝手にやったことですから」

 それでも律は引き下がれない。新條に借りをつくりたくないのだ。

「払う」
「いや、奢ります」
「払うって言ってるでしょ! 先輩のいうことが聞けないの!」
「先輩なんだから奢られてればいいんですよ!」
「普通逆でしょ! 払えって言ってくるのならわかるけど、奢られろ、なんて!」

 「払う!」「奢る!」のやり取りを何度も繰り返す。お互い引かず、視線でバチバチと火花を散らした。

「いいっつってるでしょ。今後一切俺の前で財布は出さないでください。こういう時くらい、かっこつけさせて下さいよ」
「くっ……わかったよ」

 そこまで言われると、さすがに従わざるを得ない。
 新條は何故自分にこんなに優しくするのか?
 律にはそれが不思議でならない。
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