ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 新條にとって自分は、出会ったばかりの上級生、ただそれだけのはず。やはり正体がバレているのでは? 何か企んでいるから自分に近付くために優しくしてくるのか?

 変装しているから気付かないのかと思っていたけれど、これだけ近くにいるのに、自分の正体に全く気付いてない方が不自然かもしれない。

 律は心配になってきて、自分のクラスの教室まで向かう途中、新條の後方をおぼつかない足取りで歩く。

 前方から、体育担当の大和田先生がすれ違う生徒に挨拶をしながら歩いてくる。律はつい最近知ったのだが、生徒達は大和田先生を影で「ゴリラ」というあだ名で呼んでいるらしい。 

 そのあだ名がピッタリだと思ってしまう容姿で、顔はゴツゴツしていて体つきは厳つい。 律にとっては少し近寄りがたい雰囲気。

 挨拶する大和田先生は、いつもと違って酷いガラガラ声だ。どうしたのだろうか。

「どうしたその声。風邪?」

 新條が心配そうに声をかけた。

「ああ……さっきから喉の調子が悪くてな……でも大丈夫だ、熱はないし」

 おもむろにポケットから何かを取り出し、それを差し出す新條。 

「これ、俺的には一番良く効くのど飴。よかったら」
「ありがとな……。恩に着るよ……」
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