ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 いつも律には優しい口調で話す新條が、声を荒げている。
 新條のグループの曲ではないのに、どうしてそこまで? 
 よっぽどダイヤモンドガールを気に入っているのか。

 そうだよね、あんな名曲他にないよね。私だって、本当は変更したくないよ。何も気にせず踊ることができたらいいけど――律はそう思いつつ、

「私は別に」

 わざと、冷めた声で返事をした。

「変更になるなんて、俺は納得いかねぇ! 先輩がここまで頑張ってやってきたんだ‼ 俺一人でしたんなら諦めるけどさっ」 
 
 そう叫んだ新條は職員室を飛び出す。
 
 ――新條が納得できない理由って、ダイヤモンドガールを私が振り付けしたから?

 そうわかると居ても立っても居られず、律は廊下まで追いかけた。

「わかってるの? 新條がこの曲で踊ると観客の反感を買うかもしれないんだよッ?」
「批判は全部俺が受けます」

 遠ざかる新條。
 律は追うのをやめ、そんなことできるわけない……と思い立ち止まった。どうせ口先だけ。それに、曲の変更を阻止するなんてもう不可能だ。

 ダンス会議は、今日のところはお開きになった。律は帰ろうと、とぼとぼと校門へ向かった。 

 そこで見つけたのは、やっと見慣れてきた赤いハイライトの髪。新條が下校中の男子生徒をつかまえて何かしている。
< 55 / 130 >

この作品をシェア

pagetop