ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~

「俺が芸能界に入って学んだことの一つ、厳しい縦社会。下っ端がどう思おうと上の奴らに従うしかねぇ。だったら、もっと上の奴らに味方になってもらおーじゃねーか」

 ――もっと上? 校長より上っていうと……。

「まさか、理事長に直訴に行くって言ってるの?」

 律の質問に新條は頷く。

「無理よ、理事長は校長以上の堅物だもの!」

 はるな先生は慌てて止めにかかったが、新條の目には強い信念のようなものが宿っている。

「諦められっかよ!」
「どうしてそこまでするの?」

 律は、ずっと疑問に思っていたことを口にした。「ねぇ、どうして?」

「……俺ね、熱愛報道が出た時、何もしなかったんですよ。否定することもなく、だんまり。今はそれを後悔してて。だから、今回もあの時みたいに何もしないままなのは嫌なんです」

「黙ってたのはどうして?」
 
 もう少しで、新條の本性に辿り着ける。律はそんな気がした。

「それは――今度きちんと説明するつもりです。本人に」

 新條は、南野ひかりとまた会えると思ってるの? 今度って、いつよ。そんなタイミング、一生来ないかもしれないのに。「ここにいるよ」って言えたらいいのに……。と、律はひとり悶々とした。

「あんたたち! これから授業なんだけど、わかってる?」

 はるな先生が腕を組み、仁王立ちしている。

「いてー! 腹が、急に、いてぇぇぇーッ! はるなセンセイ、欠席シマス……」

 新條はお腹を抱えて地べたに崩れ落ちた。

「だっ、大丈夫?」

 駆け寄る律に新條はさり気なくウインクする。
 そっか、これは演技だ。理事長に会いに行くための演技なんだ。そう気付いた律は、真似して痛がる演技をした。

「いたっいたたたっ!」
< 60 / 130 >

この作品をシェア

pagetop