ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 皆で椅子とテーブルを隅に運んで、理事長室に踊れるスペースを作った。律と新條以外の皆はダンスの邪魔にならないようにと壁際に避け、二人を見守ってくれている。

 理事長は正面の壁際でドンと構えて、こちらを見た。 

 曲の変更を阻止できるかは私たちにかかってる。……大丈夫、理事長を魅了することだけを考えればいい。五万人のドーム公演とは違うんだから。私たちならそれくらい出来るよね、新條。
 そう思って律が新條を見ると、新條も同じタイミングで律を見た。

 ――以心伝心?

 心配そうな顔でスマートフォンを握っている深川さんが声をかけてきた。

「準備はいい? 再生押すよ。――スタート!」 

 スマートフォンから奏でられる、ダイヤモンドガール。
 お互い振りは完璧に覚えている。あとはどう表現するか。

 ――全身で表現しよう、私と新條で考えた『煌めき』ダンスを。ダイヤモンドガールと一体になって、楽しめるダンスを。

 律も新條も一生懸命、踊る。
 律はしなやかな動きが得意で、新條は力強い動きが得意。
 お互いの苦手な部分は、お互いの得意な部分でカバーする。

 曲が中盤に差し掛かった頃だった。

「もう結構です」

 ダンスの途中で、理事長に止められた。
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