ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 真実はどうあれ、私はファンを裏切ったんだ。皆が望む理想のアイドルになれなかった、私の人生もう終わりだ。
 それしか頭に浮かばなくなり憔悴しきった律は、とうとう芸能界を引退したのだった。

 新條に奪われたのは律のファーストキスだけじゃない、何もかもだ。あのたった一度のキスで律の人生は終わってしまった。

 何故あの時新條は、律の腕を掴んだのか。放っておいてくれれば、何事もなかっただろうに。

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「待ってください、先輩ッ!」

 その声で我に返り、振り向いた律は焦った。新條がこちらへ走ってきている。シティーホールから追いかけてきたようだ。

「しつこい! アイドルランキングが発表されたばかりなんだからもっと身の回りの用心をしたらどうなの!」

 律は怒鳴った。どの芸能人でも世間からの注目度が増す頃は、マスコミがよく張り付いている。街中のこんなに人通りの多い道なのに、危機管理がなってなさすぎる。

 新條は鞄から、あのアイドル雑誌を取り出した。

「こんなランキング、くだらねぇ」

 するとそれを真っ二つに破る。
 そしてビリビリと、細かく細かく千切っていく。
 風にさらわれていく紙の欠片を、律は虚ろな目で追いかけた。
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