ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
 それは年に一度のアイドル人気投票ランキング。由緒正しく、今年で四十五回目を迎えている。

 そのアイドル雑誌のランキングで一位になることは全てのアイドル達の目標だ。女性アイドル部門と男性アイドル部門に分かれているが、そのランキングで1位になったということは日本一のアイドルであることを意味する。

 日本では唯一のグループの垣根を超えた公式ランキングということもあり、全国津々浦々の老若男女から膨大な票が集まる。アイドルが増えたことや推しという概念が根付いたことにより、年々ヒートアップしている。

 毎年一位は五十万票以上もの投票数。 
 ランキングは投票制だが、その雑誌を買わなければ投票できない。つまり、それだけ大勢のファンがお金を出して雑誌を買って投票してくれたということだ。

 ――ファンがそこまでしてくれたからこその一位なのに、コイツは!

 律の堪忍袋の緒が切れ、怒声を張り上げながら新條の脇腹に思いっきり蹴りをくらわせた。

「このクズヤロォォォォオオオオオ!」

 地面に横転する新條。

「イッッテェ」

 痛がりながらも笑っている。

 ――こんな時に何笑ってんのよ! 

 さらに苛立った律は新條の胸ぐらを掴んだ。

「人間の風上にも置けないヤツね!」

「……やっぱり変わっちゃいない、俺が尊敬してる先輩のままだ。アイドルを辞めても、ファンを大事に思ってる」

 新條はそう言った後、

「……こうでもしない限り殴ってくれませんからね、先輩は」

 と付け足した。
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