ダンスの新星!!~私の秘密は元トップアイドル~
「だっていきなり現れるんだもん、ビックリするでしょ! ……ねぇ他の子を手伝ってあげなよ、私はいいから」

 体育倉庫を出ていく新條の後を慌てて追うと、新條は涼しい顔をして振り返った。

「だって、こんなん持ったら先輩の華奢な腕が折れそうじゃないですか。これくらい任せろ!」

 紳士的な行動、突然のため口、重たいものを軽々と持つ逞しさ――その全てに律はキュンとしてしまう。

「よっ、日本一のモテ男!」
「アイドルランキング一位の男は違うねぇー」

 律と新條のやり取りを見ていた男子二人が、新條をからかい始める。二人共新條と同じクラスなのだろう、その口調から気心の知れた関係という感じがした。

「うっせぇ! からかうんじゃねぇ!」

 照れている新條の傍にいると、律まで小恥ずかしくなってくる。
 平常心でいたいのに、ドキドキが収まらない。

「あ、ちょっと先輩、どこ行くんですか」
「ちょっとトイレ!」

 新條といるとおかしくなりそうで、その場から全速力で逃げ出した。


 体育祭まであと一日。
 廊下を歩いていると、向こうから新條が歩いてくることに気付いた。
 律は反射的に、掃除道具入れの陰に隠れる。
 胸が苦しい。
 どきまぎしてしまう。
 気付けば、新條のことで頭がいっぱいになっている。

 ――何これ……。
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