幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
唯斗くんは私の右腕をしっかりつかんでいた。



「練習ってボールは?」



ギクッ。

唯斗くん、目ざとい。

ボールを持っていなくて練習できませんでした、なんて言えない。

用意されていると思って持ってきませんでした、なんて言えない。


そう思ったのに。



「ボールは各自持参だぞ」



なんて唯斗くんが言うから。

カチーンッときてなにか言い返そうと思ったけど。

言い返す言葉もなくて。

私は唯斗くんに向かって、頬を膨らませた。



「美羽ちゃん」



隣で春馬くんが私の名前を呼ぶ。

腕は唯斗くんにつかまれたまま、顔だけ春馬くんに向ける。



「なんで、そんな可愛い顔を唯斗に向けるの」



疑問系でもない言葉。

っていうか、今。

可愛いって言った?

可愛いなんて私にはふさわしくない言葉なのに!

……イケメンに言われるとお世辞にしか聞こえない。


そう思って、私は春馬くんに舌を出した。

バカっ、って意味を込めたのに。
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