幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
幸せの涙。

嬉しいの涙。

思わず泣きそうになった時。



「朝っぱらから何しているんだ」



聞き覚えのある声がした。

いや、聞き覚えしかない。

むしろ、今は聞きたくない声。

だって、絶対邪魔されるから。



「美羽、無視すんのか?」



ほらね。

声をかけてきた唯斗くんは視界に私を入れると、眉間にしわを寄せた。

唯斗くんの迫力に、南條くんは顔を少し引きつらせているし。


なんて、思っていると。

いつの間にか隣に立っている唯斗くんが、私を抱き寄せる。



「ちょっ! なにしてんのっ」

「それはこっちのセリフだ、バカ。バスケ部の朝練前になにイチャついてんだ」

「別に、イチャついてなんか、」

「手、繋いでいただろ」

「うっ……」



そこまで言われたら反論できない。

反論したら南條くんまで睨まれそうだし。

ここは黙るしかない。
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