幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
はあ……。

ため息をついた私は、春馬くんと繋いでいた手を離して昇降口へと向かった。


朝から気分が下がる。

体育祭に向けて意気込んでいたのに。

こんな気持ちで体育祭楽しめるのかなぁ。


春馬くんを置いて校内へ入ってきてしまったのも、少し後悔している。

なんの説明もしないで、逃げるように去ってしまったから。


本当、嫌になる。

こんな自分が嫌だ。


“ただの幼なじみ”

そう思っていることには変わりないのに。

“ただの幼なじみ”だから、兄妹のように接しているだけなのに。

春馬くんと唯斗くんがアイドルだからって私を目の敵にしないでほしい。


そう思うと怒りの感情が高まってしまう。

こんな自分も嫌だけど、肩書とかだけで判断してくる人たちも嫌になる。



「有村さん?」



背後から名前を呼ばれ驚く私。

反射的に振り返ると南條くんがいつものように爽やかな風を吹かせて微笑んでいた。


一気にテンションが上がる私。

先ほどまでのイライラはどこへ消えたのかって思う。

そりゃ、好きな人の顔を見たら元気になりますよ。
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