幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
……琴音ちゃんが私から離れるようになったのはいつ頃からだっけ。


そうだ。

私が南條くんと付き合うようになってからだ。

その時の報告の仕方がダメだった?


ううん。

そういうことじゃないと思う。

もっと別のなにかが、琴音ちゃんの中にあるのかもしれない。

じゃあ……。



「美羽?」



立ち止まっている私に、背後から声をかけてきたのは唯斗くんだった。

振り返らなくても分かる。

だって、毎日聞いている声だもん。

それに一般的に言う“イケボ”“低音ボイス”の唯斗くんだ。

間違いない。


振り返ると、やっぱり唯斗くんが立っていた。



「唯斗くん……」

「どうした? 元気ねぇな」

「えっと、これは。その……」



誤魔化せない。

誤魔化す余裕もない。

そんな私は唯斗くんから目をそらす。
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