幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
ベルプリュームのコンサートチケットを購入するために、発売当日……。

発売開始時間の何時間前からパソコンと睨めっこしていたのに。

それでようやく取れたチケットだったのに。

今更『コンサートに来ないでください』なんて、そんなの意味が分からない。



「チケット、取ってしまったんですか?」

「そうですけど……」

「では、そのチケットはこちらに返してください」



私は言葉が出なかった。


なんで。

なんで、私はコンサートに行けないの?

理由が分からない。

春原さんの言っていること、考えが理解できないから反論しようとしたのに。



「私も時間がないので。早くチケット渡してください」

「……」



圧力に負けた私。

『待っていてください』と、呟いた私は、自室の引き出しからチケットを取り出した。


……ごめん。

2人の応援、行けなくなっちゃった……。


このチケットを渡せば、本当に行けなくなる。

もうチケットは完売済み。

仮になんとかチケットを入手できたとしても、それが春原さんに見つかったらなにをされるか分からない。


私は絶望に近い感情を抱えながら、階段を下りて玄関に戻った。
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