幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「っていうことがあったんだよぉ」



私は教室に戻ると琴音ちゃんに泣きついた。

琴音ちゃんは半分呆れ顔で話を聞いてくれていた。

悩みを聞こうと思ったのに喧嘩売って帰ってくるなんて、そりゃぁ呆れるよね。

トホホな私に琴音ちゃんが口を開く。



「……美羽って、唯斗先輩のことを理解しているようでしていないのかもね?」

「どういうこと?」



思わず聞き返してしまった。

私が唯斗くんのことを理解していない?

こんなに近くにいるのに?

……たまに面倒くさい、と思うことはあるけれど。


首をかしげる私に琴音ちゃんは頬杖をついた。



「確かに一緒にいる時間は他の女の子たちよりも長いと思う」

「うん」

「だけどその分、他の女の子たちより唯斗先輩のことを見ていないんじゃないの?」



距離が近いから、それ以上相手を知ろうとしていないんじゃないの?

琴音ちゃんは、そう言った。


黙る私。

沈黙が流れる。


……悔しいけど、琴音ちゃんの言うとおりかもしれない。
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