幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
悔しくて唇を噛む。

握っているこぶしが震える。

もう限界。

飛び出して悪口を止めようとしたそのとき。



「なに騒いでいるんだ」

「ぶ、部長!」



突然の唯斗くんの登場に驚く部員たち。

部員たちは慌てて笑顔を作ってその場を離れウォーミングアップを始めた。

南條くんはそんな他の部員たちの様子を見ながら、手に持っていたボールをバウンドさせた。

そんな南條くんに近づく唯斗くん。

見ていてハラハラする。


唯斗くんは南條くんになにを言うんだろう。

それとも、なにも言わない……、とか?

心臓に悪いな。


そう思いながら様子を見守っていると。



「南條」



唯斗くんが南條くんに声をかけた。

南條くんはボールのバウンドを止め、唯斗くんに向き直った。


唯斗くん、本当に南條くんに声かけたよ!

いや、部活のメンバーとして当たり前の光景だろうけど!

今は安心して見ることが出来ないよ!

唯斗くん、無表情だし!


だけど、唯斗くんの一言で私の感情は落ち着いた。
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