幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「唯斗く、」

「……なにしていたんだ」



もう一度、唯斗くんの名前を呼ぶ私。

その声にかぶせるように唯斗くんは私に問いかけた。

その声は淡々としていて、少し怖かった。



「……バスケ部の見学」

「嘘つけ。女バスは別の場所だろ」

「……」



……唯斗くんを観察していました、なんて言えない。

それは絶対に言ってはいけないことだと、直感が私に訴えている。

下手したら、唯斗くんのプライドやバスケへの熱意を踏みつぶしてしまうかもしれないから。


黙る私に唯斗くんは小さく呟いた。



「美羽には見られたくなかったな」

「……え?」



思わずボールを綺麗に片づけている唯斗くんの横顔を見つめる。

その表情はハッキリと読み取れなかったけれど、少し悲しそうだった。

先ほどの迫力なんて全くない。

そこにはどこか疲れているかのような、弱々しい唯斗くんの姿があった。
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