幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「俺への悪口も聞こえていたんだろ?」

「……っ」



唯斗くんは雑巾でボールひとつひとつを磨いている。

まるで感情を押し殺しているかのように。

悲しいとか怒りの感情を抑え込むかのように、ボールを磨いていた。



「俺は、」



唯斗くんがぽつりぽつり、と話はじめる。



「部員たちから嫌われている」



唯斗くんから話を始めてくれるなんて思わなかったから少し驚いた。

けれど、今は唯斗くんの話を聞きたいと思った。


多分、唯斗くんのことだから。

ひとりで抱え込むには限界だったんだろう。

プライドの高い唯斗くんが、自分の抱えているものを私に話すなんてことはないから……。
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