幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「自分に協調性も指導力もないのも分かっているんだ」

「唯斗くん……」

「いくら実力があっても、チームをまとめることが出来なければ部長は務まらない」



それに。

と、唯斗くんは呟いた。



「チームワークがなければ、全国大会で優勝することも出来ない」



小さくため息をつく唯斗くん。

いつも大きく見えていた背中が今日はなんだか小さく見えた。


その背中にはだれだけの負担を抱えているんだろう。

多分唯斗くんのことだから、部長としての責任感。

芸能界との両立。

全国優勝を目指す強い気持ち……。


私には分かりきれないものだと思う。

黙って話を聞くしかできない私に顔を向けた唯斗くん。

その顔は痛々しいほどに切なかった。



「弱音を吐く時間なんてないのにな」



弱音を吐く時間がない……。

そう言った唯斗くんの言葉で、ある日の出来事を思い出す。


どこかで聞いたことのあるような言葉……。

それは、体育祭の日。
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