幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
保健室での出来事。

怪我した私の手当てをしていた春馬くんの言葉。


『こんなところで弱音言っている場合じゃないのにね』


春馬くんはそう言っていた。

春馬くんもそうだけど、唯斗くんも1人で抱え込みすぎだ。



「……春馬だったら」



唯斗くんが悔しそうに。

苦しそうに春馬くんの名前を出す。

ちょうど保健室での春馬くんの言葉を思い出していた私は驚いた。



「春馬だったら、もっとうまく立ち回れるのにな」

「え……?」

「もし、春馬がバスケ部の部長だったら……。部員たちは楽しく練習出来ていただろうな」



“比較”。

自分と春馬くんを比較する言葉。

唯斗くんからそんな言葉が出るなんて思いもしなかった。

……それほど追い詰められていたんだろう。


でも。



「私は、唯斗くんがバスケ部の部長が良いと思う」

「え?」



私は唯斗くんが磨いていたボールをひとつ手に取って倉庫を出た。
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