幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「やって良かったとは思うけど、」

「うん」

「周りはどう思っているかは……」



唯斗くんの視線が落ちる。

私はそんな唯斗くんから視線をそらし、持っていたボールをバウンドさせる。

静かな体育館にボールの音が響く。

それには唯斗くんも驚いたようで、私に視線を向けたのが分かった。



「唯斗くん」



ボールをバウンドさせていた手を止める。

私の視線の先はバスケットゴール。

だけど、はっきりと唯斗くんに聞こえるように。



「このシュートが決まったら、唯斗くんは輝けるよ!」



部長として。

バスケを愛する者として。

このシュートが決まれば輝ける。

……心から笑える。


そう強く願って、私はボールをかまえた。



「そこはスリーポイントの位置……っ」

「絶対入るから!」



そう言って私はボールを放った。

ボールは弧を描き、真っ直ぐにゴールへと向かっていく。

それはまるでスローモーションだった。
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