幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「……デートじゃないよ」



私は肩に掛けていた鞄を握りしめる。



「今日、頑張らなくちゃいけないことがあるの」



震える声。

震える手。


なに?

今更、緊張してきたの?


『頑張らなくちゃいけないこと』


それを口にすることで、自分にプレッシャーをかけてしまったようだ。

緊張なんかしなくていい。

自分の力を精一杯出してきたい。

それを望むのに……。


緊張感に焦る私の目に涙が浮かぶ。

メイクが崩れる……。

それ以前に、やっぱり唯斗くんと春馬くんには背中を押してほしい。


私は鞄をそっと床に置いて2人に近づく。



「唯斗くん。春馬くん」



今にも泣きそうな私。

唯斗くんと春馬くんに目の前に立つ。



「今日、どうしても頑張ることがあるの」



だから。



「……頭。ぽんぽん、して、欲しい……」



なに言っているんだろう、って自分でも思う。

だけど、2人に頭を撫でてもらったら安心する気がするから。

2人の笑顔を見れば頑張れるから。

だから……。
< 292 / 345 >

この作品をシェア

pagetop