幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「君の歌とダンスは特別素晴らしいわけでもない」

「……はい」



ハッキリ言われちゃったよ。

素人の歌とダンスってことは誰よりも分かっているけど。

じゃあ、なんで私が選ばれたの?

他にも凄い人たくさんいたのに……。



「だけど」

「……?」

「人の想いを大切にする力。人に気を配ることができる力は君にはある」



控え室での出来事も聞いたよ。

と、審査員の方が教えてくれた。


他の参加者の態度。

その空気を良くしようとする私の姿勢。

参加者だけじゃなく、案内の女性スタッフにも水を差し出したこと。



「アイドルはステージだけが自分を魅せるところじゃない。ファンの見えないところでも、周りに気を配ることが自然にできないといけない」



息をのむ参加者たち。

自分の行いを後悔していることが伝わった。



「そして。誰よりも楽しみたい、輝きたい、という意思が伝わってきたよ」

「あ、ありがとうございます!」



徐々に理解をしてきた私。

だけど、ひとつだけ分からないことがあった。

それはすぐに審査員の方が教えてくれて。
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