幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
「唯斗さん、春馬さん、お疲れ様です」



春原さんが私たちに気が付いたのか、挨拶をする。

唯斗くんたちも春原さんに挨拶をしている。

って、私には挨拶しないのか!

私もこの場にいるんですけど⁉


……でも、まあ、春原さんが私に挨拶をしないのと同じで、私も春原さんに挨拶していないからなぁ。

人に求める前に自分から……、って、まさにこのこと。


仕方ない。

私が大人になって挨拶をしよう。


唯斗くんたちと打ち合わせを始めようとしている春原さんに、少し苛立ちを覚えながらも、私は笑顔を作った。



「春原さん、こんにちは」

「……ああ。あなたも座ってください」



そう言って手招きをされる。


ソファに座れ、ってこと?

その前に挨拶くらいしてください。


『ああ』ってなに。

『ああ』って。


私は笑顔を顔に張り付けながら、空いているソファの端っこに座った。

隣には唯斗くんがいて。

唯斗くんの隣には春馬くんがいて。

私たちの向かいには春原さんがいる。
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