幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
ふう。

朝から疲れる。


私は自分の席に座って、鞄の中から教科書などを取り出し机の中にしまう。


だけど。

疲れる要因はそれだけじゃなかった。



「きゃぁあ! 唯斗くんよ!」

「春馬くんも一緒だ!」

「写真撮りたいーっ」



廊下から女子たちの黄色い悲鳴が聞こえる。


……水樹兄弟、今日も人気だな。


そうなのだ。

唯斗くんと春馬くんとは同じ高校なのだ。


それは偶然だった。


入学式の日。

昇降口に貼られてあるクラス表を確認していたら、辺りが騒然とした。

なにごとかと思ったら、唯斗くんと春馬くんが昇降口に向かって歩いてきているじゃないか!

びっくりして声を出せない私に、2人が近づいてくる。



『美羽ちゃん。……久しぶり』

『……よお』



あんな大勢の前で、わざわざ私に話しかけるなんて!

私のことを覚えていてくれたなんて!

久しぶりの感動の再会!


……とは、ならなかった。

なにせよ、女子たちの視線が冷たかったから。


だから、私は言ってしまったのだ。
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