幼なじみの双子アイドルの推しが私なんてありえない!
頬に触れている私の手に、自らの手を重ねる。

そして、そっと私の手を降ろした。


一瞬、壁が作られた、と思った。

春馬くんの偽りの笑顔。

触れることを止めた春馬くん。


それは全部、私が『なんかあった?』と、聞いてからだった。


……聞いてはいけないことだったのだろうか。

でも。

これから一緒に住む人間として、元気ない人を放っておけない。



「……明日早いから、今日は休むね」

「ちょ、春馬くんっ」



私はその後姿を追いかけようとしたけれど、間に合わなかった。

春馬くんは私から逃げるかのように自分の部屋へと入っていった。


廊下で呆然と立ったままの私。

……春馬くん、どうしたんだろう。

夕飯も食べないつもりなのかな。


だって、そろそろ6時……。

夕飯の準備を始めたい時間……。


そう思って腕時計を見ると。
< 88 / 345 >

この作品をシェア

pagetop