隣の住人。
杏ちゃんが乗ったタクシーが走り始めて、私たちの視界からいなくなった。
「俺らもタクシーで帰るか?」
『すぐそこだけど…』
と、
真剣に答えてしまった私。
けど、こいつは冗談で言ったみたいで…苦笑いしてこっちを見てきた。
笑わせてくれてるのかな。
こんな気遣いができるやつだったっけ?
最後に会った時は、急に立ち止まった事からぶつかってイライラしていたな。
と、
あの頃が懐かしく思えた。
たったの2週間前。
2週間でというか…今日1日で、こんなにも人に対する感情が変わって不思議な感覚だった。
『歩いて帰れる』
「じゃ、歩こう」
『…ぅん』
「コンビニ寄っていい?」
『うん』
いつもなら嫌だと思うことも…今日は、不思議と嫌だと思わなかった。