隣の住人。
「はいはい」
通話ボタンを押しただけでその場にいなかった謙人。
『謙人、顔見て聞いて』
と、
言うとやっと顔を見せてくれた。
ラーメンみたいなすすり音が聞こえてきたから、ご飯を食べている最中らしい。
味噌ラーメンがいいんじゃん?
と、軽く言った事をちゃんと従ってるのが可愛かった。
「何?」
『実家でずっとじいじとばあばと過ごしてて…そのじいじが病気になっちゃったって』
「何の?」
『癌だって』
「結構、本格的」
『そうなの、悲しみに浸ってる』
「じいちゃんが1番悲しいんじゃん?」
『そうだよね』
「ひなも悲しいと思うけど、一緒にいられる時間が少ないんだし…後悔ないくらい一緒にいないとね」
『うん、だよね…』
謙人に話を聞いてもらって少しはスッキリしたけど、なかなか心の整理はつかなかった。