隣の住人。




電車を乗り継いで、最後はタクシーに乗って向かった。




到着した場所は凄く大きな霊園。

1人で歩いたら迷子になってしまいそうだった。





謙人は、受付でお花とお線香を購入して両親のお墓へ向かって歩き始めたところ。

坂続きで歩くスピードもゆっくりになってしまったけど、謙人は嫌な顔一つせず私のペースに合わせてくれていた。







『よく迷わないね、広くてわからなくなりそう』

「最初は迷ってたけど、慣れるもんだよ」

『凄いね』



と、

話しながら歩いていると急に立ち止まった謙人。



私の為に止まってくれたの?

私は、何も考えず謙人の横に立って休んだ。





「一回戻ろう」

『え、何で?』


と、

言っている間に繋いでいた手を引いてきた。




それも、

優しい感じではなく、強引な感じだった。




『何かあった?』

「何もない」




そうとは思えないくらいの強張った表情。

私は、違和感しか感じなくて…謙人の前に立ちはだかった。





『何もないって思えないくらい怖い顔してるよ』





正直、こんな怖い雰囲気の謙人は初めて見た。



誰かと喧嘩が始まる直前という感じだった。

いつも優しい謙人とは程遠い表情。



こんな謙人を見てたら、不安になる。



< 317 / 370 >

この作品をシェア

pagetop