隣の住人。







「ひなのこと待ってるから早く会ってあげて。」

『謙人も一緒に来てくれたの、一緒に行っていい?』

「初めまして、この状況の中のご挨拶で申し訳ないです。」

「ひなのこと連れてきてくれてありがとうね」






お母さんと謙人が話終わった後に、集中治療室内に入ろうとした時に看護婦さんに


「申し訳ありませんが、ご家族しかお会いすることができません。」


と、

言われて謙人だけ止められてしまった。





そしたら「ひな行っておいで」と、繋いでいた手を離してきた謙人。

私は謙人が手を離してきたことに対しても、看護婦さんに対しても怒りが芽生えて感情に任せて何も考えずに『家族です!』と看護婦さんに言っていた。




「失礼しました。」

「ひな、落ち着け」

『落ち着いてる』



と、

喧嘩口調で謙人に言った。





後から考えたらごめん案件だけど、頭はじいちゃんのことでいっぱいすぎて何も考えてなかった。





久しぶりにじいちゃんの顔を見た。

3ヶ月前に会ったじいちゃんとは別人だった。




痩せ細っていて、頑張って闘病してたんだろうなという表情していた。




何も知らなくてごめんね。





『じいちゃん、ひな来たよ』

『遅くなってごめんね、会いに来れなくてごめんね』

『もう起きないの?疲れちゃった?』




と、

たくさん話しかけたけど、答えてくれることはない。





酸素マスク、それに体には管がたくさん通っていて…見るからに痛そうだった。



無責任に生きて欲しいとは言えない。

生きていても辛いなら可哀想すぎるから…



じいちゃんは十分頑張ったよね、ごめんね。







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