隣の住人。





ゆっくりはできないけど、家に帰ってひと段落した頃に謙人に手招きされて「ひな」と呼ばれた。




『ん?』

「一回帰るわ!ごめん!」

『わかったけど』


と、

言ったらすぐに察してくれて抱きしめてくれた謙人。




もう何なの!この人!

全部お見通して、泣けてくるんだけど…つらすぎる。





「こんな時にそばにいられなくてごめんな」

『一緒に帰りたいけど、ここにもいたい』

「今はじいちゃんのそばにいてあげなきゃ」

『頑張る』

「えらい」

『駅まで一緒に行く』

「ごめんだけど、わからないからお願いする」





謙人は日帰りになってしまったけど、職場と相談してお葬式にきてくれるみたいだからそれまでは我慢。





駅までの片道20分くらいを謙人と手を繋いで歩いた。







『遠距離するみたい』

「俺らはね、遠距離に向いてないと思う」

『だよね、ひなもそう思う』





駅が見えてきた頃に、急に肩に手を回され引き寄せられながら歩くわたしたち。

付き合う前はよくやられて気持ちわる!と思ってたけど、今は何も思わないしむしろ嬉しいと思うこの感情の差。







「ちゃんとご飯食べて、たくさん寝て、俺の電話にも出ろよ?」

『うん』

「ひなは俺が支えるからひなはお母さんのこと支えてやれよ!わかった?」

『うん』





泣きそう。

だけど、必死に堪えて…我慢我慢。





『好き、だいすき』





好きの言葉じゃ足りないくらい。

この思いが謙人に伝わってると嬉しいな。





「誰かに見られてたらどうしよう」と、言いながら笑ってキスをしてきた。




『噂になっちゃう』

「やばいね」





そう言いながら、3回くらいされた。






とんでもなく息抜きになって、ほんとに助かった。

それに、とんでもなく好きです。ほんとに。






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