骨の髄まで愛したい
 電話を切った後も何を考える気力もなく、ただぼうっと降りしきる雨の様子を見ていた。

 「──美咲!」

 突然私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 公園の入り口に見慣れた人影を見つける。

 「英二さん‥」

 すると私の方に駆け寄ってきて‥‥私は英二さんの太い腕の中にいた。

 驚くほど硬い胸の中に、私は顔をうずめ、ひたすら泣いた。冷たい雨が、彼の体温をより温かく感じさせる。私は彼の背中に手をまわし、彼の白いシャツを握りしめた。彼は私の頭を大きな手で優しく撫でる。彼の息切れが雨の音に混じって消えていく。忙しない彼の鼓動が、私の体全体に伝わってきた。

 それから私が落ち着くまでずっと抱きしめてくれた。雨が私たち2人を包み込むように降り注ぐ。

 まるで、世界に私たちだけしかいないのではないかと思うくらい、静かな空間だった。
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